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安易な代表者決定は危険

塚本 侃| 2006年 8月号掲載

  今回就業規則を制定しようと考えています。労働者の過半数を代表する着から意見を聞く必要があるそうですが、代表者はどの様にして選ぶのですか。

 就業規則を制定するにあたり、「労働者の過半数を代表する労働組合」がある場合にはその労働組合の、その様な労働組合がない場合には「労働者の過半数を代表する者」の意見を聞く事が必要とされています。

 そして、質問では労働組合がないということを前提としていると思われ達すので、確かに「労働者の過半数を代表する者」を選出することが必要になります。その際、代表者の選出が煩わしいということで、例えば従業の過半数からなる親睦会がある場合に、その役員を「労働者の過半数を代表する者」として意見を聞くということが見受けられます。

 しかし、「労働者の過半数を代表する者」とは、「意見を聞かれる者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法で選出された着であること」とされていますので、従業員の親睦会の役員の意見を聴取した就業規則の制定は結局労働者側の意見を聞かないで制定されたものとなります。

 ところで、「労働者の過半数を代表する者」という場合の「労働者」と言うのは事業場に使用されている全ての労働者を意味しますので、管理職手当又は役職手当などの支給を受け時間外などの割増賃金が支給されない者も労働者の範囲に含まれます。しかし、労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)2号に規定されている監督又は管理の地位にある者は「代表する者」にはなれませんので注意して下さい。

 それでは、パートタイマー専用の就業規則を制定する場合はどうでしょうか。この場合には、一般従業員用とパートタイマー用と形式上は2つの就業規則がありますが、その2つを合わせたものが事業場の就業規則になりますので、パートタイマーを含めた全従業員の過半数を代表する者の意見を聞けば足りることになります。

 パートタイマーの過半数を代表する者の意見を聞けば足りるというものではありません。もっともパートタイマーの過半数を代表する者の意見を聞くことはかまいませんし、パート労働法も意見を聞くよう努めるものと定めています。

「労働者の過半数を代表する者」

就業規則を制定する際に従業員の親睦団体が労働者の過半数を超えているからといってその代表者の意見聴取で済ませることは出来ません。

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桜樹法律事務所の企業法務

昭和22年生まれ。
熊本高校-中央大学法学部卒。昭和56年弁護士登録。平成15年熊本県弁護士会会長を務めたほか、日本弁護士連合会、九州弁護士会連合会で要職を歴任。熊本県収用委員会会長。

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