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早期退職優遇制度には制限条項を
塚本 侃| 2007年 2月号掲載
早期退職優遇制度の採用を考えています。その際、成績が低迷する社員が応募してくれるのはありがたいのですが、優秀な社員が応募してきたのでは困ります。何とか優秀な社員の早斯退職を思いとどまらせる方法はありませんか。
就業規則は「合理性が認められる範囲内で」、労働条件と職場規律を集合的、画一的、統一的に定めたものとして労働者に対し明示することにより法規範として労働者を拘束するに至るもので、しかも、使用者が一方的に作成し、変更する権限を持っているものですから、就業規則(退職金規定)中に、「早期退職優遇制度の適用は、会社が認めた者に限る」という制限条項を盛り込むことができます。そして、実際にも多くの企業でこのような制限条項を設けています。
ところで、このような制限条項は、会社都合の選別と言えるので、「合理性が認められる範囲内で」と言えるか、あるいは「公序良俗違反」に当たらないかが問題となります。しかし、会社が承認しない場合、労働者は雇用を継続するか、割増金を受けずに退職するかどちらかを選択するしかありませんが、それは会社と労働者の希望が合致しないために特別の利益を受けられないというだけで、労働者に不利益を強いるものではありません。会社の承認を要件とした趣旨(企業に必要な者の退職を思いとどまらせる)は、それ自体不都合とは言えず、そのような取り扱いは公序良俗に反するものではありません。
ただ、就業規則(退職金規定)として定めるということになりますから、その案を作成した後、会社に労働者の過半数の者が加入している労働組合がある場合にはその労働組合の、そのような労働組合がない場合にはその事業場の労働者の過半数を代表する者の意見を聞いて、その意見書を添村して所轄労働基準監督署長へ届け出て、これが受理されたら常時各作業場の見やずい場所に掲示するなどの方法で、労働者に周知させることが必要です。そして、実務上は、会社の承認が必要であることが明確になっている必要があります。会社として、支給対象を取捨選択したいということであれば、言った言わないの水掛け論にならないように、募集要領・要件を書面に明記して掲示する、配布するといった配慮が必要ですし、制度の適用を承認するか否か、その回答も明確にしておくべきです。
「早期退職優遇制度と優秀な社員の確保」
早期退職優遇制度の下で優秀な社員の退職を思いとどまらせるためには、同制度の適用は会社が認めた者に限るという条項を入れることが効果的です。