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管理監督者とは実態に即した判断を

塚本 侃| 2008年 8月号掲載

 最近、飲食店のマネージャーに時間外割増賃金を支払うことを命じる判決が出たことを紹介するテレビニュースや新聞記事を見ましたが、どこが問題なのですか。

 労働基準法第41条では、管理監督者に対して時間外割増賃金を支払わなくても良いとされています。管理監督者の場合には、その地位から労働時間の規定を適用して保護する必要がないからです。

 しかし、管理監督者として認められるためには、①労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的立場にある者で、②就業時間や職務の遂行について相当程度の自由な裁量があり、③部下の人事や経営の重要な事項を知り、それについてのある程度の決定権があることが必要とされています。

 そこで、具体的に考えてみますと、まず、人事に関しては、アルバイトの採用は認められても人件費の面からその人数に制約があり、正社員の採用は認められず、賞与の査定はしても決定出来ない場合には、管理監督者としては否定的となります。

 次に勤務時間や勤務態様については、勤務時間はある程度自由であっても、店舗の営業時間中は在店しなければならないとか遅番と早番のいずれかで出勤しなければならないとか、欠勤した場合に賃金がカットされるという場合や店舗の営業時間を決める権限がない場合には管理監督者としては否定的となります。

 また、店舗の運営に関しては、メニューを決めたり売上げの管理や人件費などについて権限が認められていても、売上目標の決定権限がなかったり、店舗改装や什器の購入等について権限がない場合には管理監督者としては否定的となります。

 さらに、店舗の基本的な運営方針を決める会議へ参加していても、発言時間が短く、その内容も経営事項に関する提案というよりも意見具申程度に止まっているという場合には管理監督者としては否定的となります。

 最後に、賃金についても、一般職の最上位の基本給が管理職の最下位の基本給より高額であったり、一般職の最上位者に支給される役職手当が管理職の最下位者に支給される役職手当より低額で相当差があっても、一般職の最上位者に支給される定額時間外手当を考慮するとその差額がほぼ無くなる場合には、その最下位の管理職は管理監督者としては否定的となります。

「管理監督者とは」

管理監督者とは肩書きで判断されるものではなく、職務内容・権限・勤務態様・賃金等から実態に即して、労働時間の規定を適用する必要のない人か否かで決められます。

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桜樹法律事務所の企業法務

昭和22年生まれ。
熊本高校-中央大学法学部卒。昭和56年弁護士登録。平成15年熊本県弁護士会会長を務めたほか、日本弁護士連合会、九州弁護士会連合会で要職を歴任。熊本県収用委員会会長。

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