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期間の定めの有無のみを理由とする労働条件の区別
塚本 侃| 2013年 12月号掲載
労働契約法第20条は期間の定めがあることによる「不合理」な労働条件の相違を禁止していますが、「不合理」かどうかについてどの様に考えればいいのですか。
労働契約法は、単に期間の定めの有無の違いのみをもって全く別に扱うことが合理的かどうかを問題にし、違いが「合理的理由」によるものであれば許されるとしています。
そして、様々な労働条件について判断をする場合、まず、職務内容や人材活用の仕組みに関連するか否かで区別することが分かりやすいと思います。
基本給や職務手当などの職務内容と関連性の高い給付、昇給・昇格、退職金、年休日数などの勤務期間と結びついた給付、賞与などの会社への貢献に対して支給される給付、時間外労働手当などの労働時間の長さや配置に関わる給付については、一般的に有期と無期の契約の間においては事実が違うケースが多いことから、相違があったとしても直ちに不合理にはならないと考えられています。
しかし、通勤手当、食堂利用、出張旅費、健康診断、病気休業、社内行事への参加などについては、職務内容や人材活用の仕組みとは直接関連しておらず、いわばその使用者のもとで働くこと自体によって生じるような性格のものですから事実が違うケースは少ないことから、有期と無期の契約間で、支給、不支給の差を設けることは、特段の理由がない限り合理的とは認められません。
とはいえ、給付の目的・性質は多様であり、給付の名称だけでは判断できないものもあります。例えば、退職金や賞与は職務との関連で支給される場合もありますが、勤務期間に応じた支給、会社への貢献に応じた支給という場合もあり、その実態に応じた判断が必要になってきます。そして、定年後に再雇用された有期労働契約の労働者は、定年前の無期労働契約の労働者よりも基本給を含めて労働条件が低いのが一般的ですが、労働契約法施行通達はそれは許容されるとしています。
また、入社1年未満の新入社員と同じ仕事をしている有期労働契約の労働者について、同じ仕事をしているのに基本給に差があるとして問題となりかねませんが、労働契約法第20条の「当該職務の内容及び配置の変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、転勤・昇進等の人事異動や本人の役割の変化(配置の変更を伴わない職務内容の変更を含む。)を考慮要素に入れるということなので、基本給の差が一定の範囲内であれば不合理とは認められないと考えられています。
なお、有期労働契約にはステップ雇用としての重要な機能があるので、「不合理と認められる」理由の解釈にあたっては、有期労働契約を有効に活用するという観点からの判断も必要です。
「職務内容や人材活用の仕組みに関連するものか否かで取り敢えず判断を。」
職務内容や人材活用の仕組みに関連する給付は有期契約と無期契約ではもともと違っていることが多いのでその相違は合理的と考えられますが、職務内容や人材活用の仕組みに関連しない給付は使用者のもとで働くこと自体によって生じるものとして、その相違は不合理と考えられます。