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株主の相続人から株式を買い取るには?
馬場 啓| 2006年 12月号掲載
当社は株式の譲渡制限をしている非公開会社です。最近、株主の1人が亡くなり、相続人が株式を承継しました。当社としてはこの際、相続人から株式を買い取ってしまいたいのですが、相続人が株式を手放さない場合、何か方法はないでしょうか。
今年の5月に施行された新会社法で、相続によって譲渡制限のある株式を取得した者に対して、会社が当該株式を売り渡すよう請求できる制度が設けられました。
この売り渡し請求の制度によれば、たとえ相続人が売り渡しを拒んでも、会社が株式を買い取ることが可能です。
以下に具体的な手続きをご説明しましょう。
売り渡し請求の制度を導入するためには定款の定めが必要です。そこで、まず株主総会でこの旨の定款変更決議をします。この決議には議決権の過半数を保有する株主の出席と、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(これを特別決議といいます。)。
次に、やはり株主総会の特別決議で、売り渡し請求する株式数と相手方(相続人)の氏名などを決議します。
その上で、相続人に対して売り渡しの請求をします。売り渡し請求ができるのは会社が相続を知ってから1年以内とされていますので注意してください。
売り渡し請求した場合の売買価格は、会社と相続人との協議によって定めることになりますが、協議が整わない場合は、売り渡し請求した日から20日以内に裁判所に対して売買価格決定の申し立てをすることができます。
この期間内に申し立てがないときには売り渡し請求は無効になるのですが、期間内に申し立てをすれば、裁判所が売買価格を決定してくれます。
つまり、この売り渡し請求の制度によれば、相続人が売り渡しを拒んでも、また売買価格について協議が整わなくても、会社は裁判所が決定した価格で相続人から株式を買い取ることができるわけです。
以上、相続人の例でご説明しましたが、この売り渡し請求の制度は、好ましくない者が株主となることを防ぎたいという非公開会社のニーズに応えるものであり、相続のほか、包括遺贈や合併などによって株式を一般承継した者に対しても適用があります。
「新会社法と株式売り渡し請求制度」
新会社法では、相続により譲渡制限のある株式を取得した者に対し、当該株式を売り渡すよう請求できる制度が設けられました。相続のほか、包括遺贈や合併などで株式を一般継承した者にも適用されます。