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豪雨で浸水。建物の賃料や物件のリース料の支払いは?
馬場 啓| 2012年 8月号掲載
このたびの九州北部豪雨により、当社が支店として賃借している建物が浸水してしまいました。賃料関係はどうなるのでしょうか。
また、浸水により、リースで借りていたファックスコピー機が損傷して使いものにならなくなりました。使えなくなった後のリース料を支払う必要がありますか。
まず、建物(支店)の賃料についてですが、浸水後の建物の状態によって異なります。もし建物が浸水によって全部損壊してしまったという場合であれば、賃貸借の目的物がなくなってしまったわけですから、もちろん賃料の支払義務もありません。これに対し、建物の一部が損壊したという場合は、御社としては基本的には家主に対してその損壊部分の修繕を求めることになります。この場合、賃料支払義務自体はなくなりませんが、建物を使用収益できない割合に応じて賃料の全部または一部の支払を拒むことができます。また、家主が修理してくれない場合、御社の費用で修理したうえでその代金を家主に損害賠償として請求し、これを賃料支払義務と相殺することも可能です。さらに、家主の修繕義務の不履行を理由に賃貸借契約を解除すれば、その後の賃料支払義務はなくなります。
つぎに、リース料についてですが、さきに述べた建物の賃料と違って、浸水によってファックスコピー機が使いものにならなくなった(全部が損壊した)場合であっても、リース料の支払義務はなくなりませんし、ファックスコピー機の一部の機能が使えなくなった場合であってもリース料の減額を求めることはできません。これは、リース契約においては、特約によって、リース期間中に不可抗力等で目的物がなくなっても、ユーザー(借主)は契約どおりのリース料の支払義務を負うこととされているのが通常だからです。また、リース契約上、修理費用はユーザー(借主)の負担とされるのがやはり通常ですから、リース会社に修理を求めたり修理費用を損害賠償として請求することもできません。
このような違いは、同じ「借りる」ものであっても、賃貸借契約は「物」を借りるのに対し、リース契約は「物の購入資金」を借りる(ファイナンスリース)という性質を持っていることによります。銀行からお金を借りて購入した自動車が他人に盗まれてなくなっても、銀行に対する支払義務はそのまま残るのと同じなのです。
「賃貸借契約とリース契約」
目的物滅失・毀損の危険は、賃貸借契約では貸主(家主)が負担するが、リース契約では借主(ユーザー)が負担する。