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非上場株式の売買価格
北野 誠| 2015年 7月号掲載
当社は、資本金5000万円の株式会社であり、定款で株式の譲渡につき会社の承認を要する旨の規定をおいております。今回、株主でもある取締役の一人が自分が保有する株式を額面(1株5万円)で買い取ってくれと言ってきています。当社は、この申出に応じる必要がありますか?
株式の譲渡制限が設けられている株式会社において、譲渡制限株式を売り渡そうとしている株主は、会社に対して、①譲渡しようとしている譲渡制限株式の数、②譲受人の氏名または名称、③会社が譲渡承認をしないときに、会社または指定買取人の買取を請求する場合にはその旨を明らかにした上で、会社に対して譲渡を承認するか否かの決定をするよう請求することができます。
係る請求を受けた会社は、定款に別段の定めがある場合を除いて、取締役会設置会社においては取締役会、その他の会社においては株主総会において承認するか否かを決議し、譲渡承認請求者に通知しなければなりません。
会社が承認をしない旨の決議をした場合、会社は、当該譲渡制限付株式を自ら買い取るか、指定買取人を指定することになります。
ところで、ご質問のケースでは、申出人である株主兼取締役は単に会社に株式を買い取ってほしいとの申し込みをしているに過ぎず、上記譲渡制限株式の譲渡手続のいずれにも該当しませんので、御社としては買取に応じる義務はなく、承諾をするか拒否をするかを自由に選択することができます。
ただし、当該株主兼取締役が第3者に譲渡しようとして、会社に対して譲渡承認の請求をしてきた場合には、上記の手続を経る必要があります。
では、その場合の売買価格については、当該株主権取締役が主張する額面での買取をする必要があるでしょうか。
この点、会社法は、売買価格については、原則として会社または指定買取人と譲渡承認請求者との協議によって定めるとしています。また、会社または譲渡承認請求者は、会社が自ら買い取るかあるいは買取人の指定を通知した日から20日以内に、会社または譲渡承認請求者は裁判所に対し、売買価格の決定の申立ができるとしており、係る申立がなされたときには、裁判所は会社の資産状態その他一切の事情を考慮して売買価格を決定することになります。
なお、当事者間の協議が整わないまま、20日以内に上記申立がなされなときには、1株あたりの純資産額を基準に、これに買い取る株式の数を乗じた額が売買価格になります。
「譲渡制限株式」
株主は株式を自由に譲渡できるのが原則ですが、例外的に経営にとって好ましくない者が経営に参加するのを防止するために、株式に譲渡制限を加えることができます。
このような、譲渡制限株式の売買価格の算定方法として収益還元方式、配当還元方式、純資産方式、類似業種比準方式等の評価方法をここのケースに応じて、単独または併用して算定する等の方法が用いられています。