離婚合意の事例
Aさんが法律相談にみえ、X弁護士が相談を受けました。Aさんは、会社員の夫(B)と結婚し、幼稚園に通う6歳の子ども(C)との3人暮らし。仕事は、Cの出産を機にやめて現在は専業主婦とのことです。
Aさんの相談内容は、Bとの結婚生活の中で、Bから過去に暴力を受けたことがあり、現在は、Bから常に威圧的な言動を受けていて、Cの前でもBから侮蔑的な言動をされるなど、Bと一緒に生活を続けることに苦痛を感じる、ただ、離婚してしまうと生活ができるのか不安があるとおっしゃっていました。
この相談に対して、X弁護士は、
① 離婚後の生活について、仕事・住居・Cの学校等具体的にどのようにしたいか考えること
② 別居する際は、現在も暴力のおそれがあれば、DV法の保護命令を利用できる可能性もあること
③ 離婚にあたっては、親権のほかに慰謝料、養育費、財産分与、年金分割等の主張が可能であること
を伝え、離婚を求めるか検討してほしいと回答しました。
後日、Aさんが来所され、
① Aさんの両親に相談したところ、当分はAさんの実家に住むことができることになった。
② 仕事が見つかれば、いずれ自立したい。
③ 現在は暴力の恐れはないが、威圧的な言動は続いていること。
④ 別居し、離婚する意思を固めたこと。
とのことでした。
そこで、AさんとX弁護士は、今後の進行について協議し、
① 徐々に私物を持ち出し、別居完了までにA・Cの持ち物等忘れ物をしないこと。
② 別居後、X弁護士から委任を受けた旨の通知を発送すること。
③ 調停を申し立てること。
④ 調停では、親権、慰謝料、養育費、財産分与、年金分割を求めること。
などの方針を確認しました。
Aさんの別居後、X弁護士はAさんとその家族に直接の連絡をしないようBに通知した上で調停を申し立てましたが、Bは調停では離婚する気はないし、離婚しても親権は譲らないと主張しました。AさんとX弁護士は、調停の進行について協議したところ、このまま調停を継続しても、平行線をたどり調停が長期化することが懸念されました。
そこで、調停は不調とし、訴訟提起することになりました。訴訟提起後、Bは離婚には応じるものの、親権は譲らないと主張を変更しましたが、現実にCはAさんと生活し、Aさんの実家近くの小学校に入学したことなどから、親権の主張もあきらめ、和解金(慰謝料・財産分与)・年金分割・養育費の他に、月に1回程度BとCが会う機会を設けることで離婚成立となりました。
解決のPoint
離婚事件においては、調停前置主義がとられ、家庭裁判所における調停(話し合い)を経ないと訴訟提起することはできません。
離婚は、相手方が離婚自体を争っていれば、民法で定められた離婚事由を満たすことが必要となるため、離婚事由を満たすかどうか微妙な事案であれば、調停で解決することを目指すことになります。
本件では、過去とはいえ暴力の事実があり(診断書等の証拠あり)、日常的な威圧的な言動もAさんが具体的に表現することができたため、離婚事由を満たす可能性が高い事案でした。そこで、調停が長期化した上で成立しないという事態をさけるために早期に調停を終了させて訴訟提起することにしました。訴訟においては、最終的にBはCと定期的に会えればAさんの請求をある程度受け入れる意思を示しました。
この点、Aさんは、BとCの面会時にBと会わなければいけないと難色を示しましたが、CがBと会うことを望んでいること、Aさんの父親が面会時にCを連れていく意思を示していること、BもCと面会する機会がある方が養育費の支払いも円滑に進むことなどからBの面接交渉も和解の条件におり込んで解決することになりました。
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